料理人は「気を使う」仕事。
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最終更新日:2015/07/22
日記
昨日が梅雨明けだった京都。
梅雨のまっただ中、カラッと晴れた日の夕方に見られた青色の世界。
夕日が西の山に完全に沈んでから、世界が真っ暗になるまでの短い間に訪れる。
いつも見ている景色が神聖に、違って見える。
働き始めてから、見えてきた世界・感覚がある。
「料理人ってどんな仕事?」て聞かれたら、今の僕なら「気を使う仕事だよ」と答えるかな。
『気を使う』
お客様に失礼がないように、気持ち良い時間を過ごして頂くために、喜んで帰って頂く為に、色んな事に気配りをする。
それはお客様がご来店されて、料理を召し上がっている最中はもちろん、お越しになる前、お帰りになってから次お越しになるまで。
いつもアンテナを張って、気を利かせ続ける。
『気』を使う
これが、働き始めてから持つようになった感覚。
生気に満ちた食材は、「料理人」を幸せにする。
まずは自分が納得した、惚れ惚れするような食材を仕入れる。
魚だって野菜だって、思わず「綺麗だなー」と見とれてしまうもの、「見て見て!」と誰かに見せたくなるような食材がある。
そんな食材からは、言葉にはならない気を感じる。「生気(生き生きとした様子)」という言葉がぴったり。
先日、庭で採った南天の葉。その若々しい緑色に生気を感じ、惚れた。
生気に満ちた食材を調理する時、料理人はやる気になり、元気になる。
「この食材をどう調理しよう、どうやってお客様に召し上がって頂こう、どうしたら喜んでいただけるか」と考える。ワクワクする。
食材に惚れて、思わず買ってしまうことだってある。
いつも見ているからこそ、その違いが分かる。
食材あっての料理人だからこそ、自分が満足して惚れた食材が手に入った時には嬉しくなるし、幸せを感じるのだ。
生気に満ちた食材は、「お客様」を幸せにする。
どんなに腕の良い料理人であっても、食材が良くないと美味しいものは出来ない。
逆に、鮮度が良く美味しい生気に満ちた食材は、調理する選択肢も増え、何をしても美味しい。
そういったものほど食材の味を活かした、あまり手を加えない調理をする。
そして味はもちろんのこと、色が鮮やかに出たりと、見た目にもお客様を幸せにする料理になりやすい。
「料理をする」とは、気を込めて、気を届ける作業。
料理とは、食材の気の有無を感じられない人が、その気を感じられるようにしたものと言い換えることが出来るように思う。
生気に満ちた食材を選び、その食材に合った調理法を選び、丁寧に調理することで更に気を込め、似合った器を選び綺麗に盛り付けて、お客様が幸せを感じるものに変える。
そうやって、気を届ける。
結局、「気」ってなんなの?という質問には上手く答えられないけれど、お客様を思って丁寧に仕事をすることで料理に自分の「気」を込める。
それは、お客様に幸せになって帰って頂けるように思いを込める作業とも言える。
「気」や思いは、周りの人に伝わってしまうもの。
だからこそ、やる気のない人、なんとなく作業を粉しているだけの料理人を見るといらっとするし、将来は絶対にそんな料理人とは働きたくない。
やる気ある人が集まっているチーム、そしてみんなが生き生きとやる気を持って働く環境が整ったお店を、将来は作りたいと思う。
瞭
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